2006年12月号

オートアナライザーの環境分析への活用

東芝ナノアナリシス株式会社 西沢正人

 オートアナライザーの一ユーザーの立場でありながら、執筆の場を頂いたことに感謝致します。先ずは、借越ではありますが、弊社の紹介をきせて頂きたいと思います。

 弊社は、東芝関係会社で、材料及び液品等の電子テバイスの分析を中心に実施して来ました分析部門と半導体の分析を中心に実施して来ました分析部門が2002年に統合し東芝グループの中で唯一の総合分析会社として設立されました。半導体に関する東芝グループ内の物理分析評価が業務の大半を占めますが、各純材料、電子デバイス等の化学分析、有機分析などは、東芝グループ外の分析評価も積極的に対応しています。最近では、RoHS指令規制物質等のグリーン調達分析にも材料、部品の分析を長く行って来た経験を生かし要求に合ったサービスを展開しております。

 環成分析の歴史も古く、環境負荷低減に係わる分析も含め工場、事業所管理に必要な水質、大気、土壌の分析も長い間実施して来ました。製品に係わる物理分析、化学分析を主として実施していることから、環境分析専門の分析会社に比べると比較的多くの装置を所有しており、オートアナライザーに関しては、私が分析部門に配属された23年前にはAA-Ⅱが既に配置され、その当時は作業環境分析で主に活用されていました。徐々に環境管理体制が強化される中、各工場、事業所から集まる工場排水等の水質分析をより早く実施する必要が出て来たため20年ほど前からオートアナライザーの環境分析への活用を検討して来ました。

 当時の環境分析へのオートアナライザー活用の一番の問題点は、計量証明を発行する必要がある分析にオートアナライザーを使用出来るかという点でした。当時、「連続流れ分析」と言う手法は、確立されていたものの計量証明事業にオートアナライザーを利用することの認知は十分ではなく、そのための検討、対策が必要であることを感じました。

 オートアナライザーの活用は、環境分析の効率を大幅に改善する可能性を秘めていました。分析フローは、ほぼ公定法と同じに出来ること、再現性、分析スピードは卓越したものがあったことが積極的に活用を考えた要因になりました。

 先ずは、工場排水の分析利用を考え、排水基準での分析項目で分析所要時間が長い蒸留が必要な分析項目の自動化に着目しました。フッ素化合物の分析はすでにモジュールが準備されていましたが実行するには精度確認が十分でなく、同時に実施されていなかったシアン化合物とフェノールの分析も設備の導入も含めオートアナライザーの活用を検討しました。蒸留操作は、操作途中に蒸留装置から離れることも出来ず1日に処理できる試料数も限りがあり熟練者が対応する必要があったことから、この項目を自動化することは排水分析の大幅改善が期待出来ると考えました。

 

 前述したように工場排水分析は、計量証明を発行する必要があったので装置導入後その条件として

①実試料での公定法との相関調査

②実試料への標準添加実験

③定量下限レベルの繰返し分析のパックデータを取ることにしました。

 

 各検討実験で、オートアナライザーの分析は良好な結果を得ました。ここで分かったことは、公定法の方がばらつきが大きく、標準添加回収率も悪かったことです。当初は、分析所要時間の短縮を目的で自動化を検討しましたが、オートアナライザーで測定することで分析精度が向上することが確認できました。次のステップとして、当時分析の要求が多かった全窒素分析の自動化に着手しました。初期は、ペルオキソニ硫酸カリウムによる酸化分解は、公定法通り実施し、手作りのCu-Cd還元カラムを装着したオートアナライザーで測定を実施しました。この結果も公定法とよく一致し、その後全窒素、全リンの同時分析用オートアナライザー(AACS-Ⅱ)の導入展開へとつながりました。

現在では、昨年横浜と深谷事業所に導入致しましたビーエルテック社製オートアナライザーと合わせ計6台を用い、各種用途に適した、環境分析を効率的に実施しております。

 いままで述べたようにオートアナライザーの長所は多いのですが、環境分析の主要設備として利用するためには、十分な保守と精度管理が必要と考えています。安定したデータを得るためには、装置稼動時のチェック、使用後のメンテナンス、定期点検などの保守は重要であり自動分析を実施する上では大切な事項となります。更に標準添加実験による回収率の確認や他の分析手法による確認、他分析機関との比較などの信頼性確保のための施策も定期的に実施する必要があります。

 又、他のオートアナライザーを利用している機関との共通試料による共同実験などもビーエルテック㈱殿の協力により開催して頂ければ日々活用している装置の状態を確認するよい機会になると思います。

 最近では、オートアナライザーシンポジウム等で計量証明事業所でのオートアナライザーの活用事例が発表されるようになりました。今後、オートアナライザーを活用する各機関がその活用例、問題点を共有することで更によりよい装置、アプリケーションが生み出されることを期待すると共に、多くの方に認知される手法となることを心から祈念しております。

(今回執筆した内容の一部は、第8回オートアナライザー研究会、第16回神環協環境計量技術事例発表会にて弊社が発表しております)

 


近赤外情報スペクトラスター2400型の活用

検量線の移設

「今までお使いの近赤外データをスペクトラスターでお使いいただけます」

 

 近赤外分析装置が登場して30年の時が過ぎようとしています。その間に装置は年々進化してきました。得られるスペクトルも、干渉フィルタ一による最高20波長程度のデータが、今では連続した1OOOを超える波長を得られるようになりました。また、検出器もPbSからより高感度のlnGaAsに変化して、より良いデータを得られるようになってきています。

 さらには、1O年程度前まではネックであった検量線解析も、コンピュータの発展により、膨大なテータでも、より高度な解析が短時問で計算可能になってきています。しかしながら、ここに来ても30年前と変わらないものがあります。それは、データ収集です。今も昔もテータ収集のためには膨大な時間と労力が不可欠で、これはこれから先、変わることのないものだと予想されます。

 そこで、我々は考えました。この作業をどうにか軽減できないかと…。今までとったデータ(または検量線)を使えないのか?しかし、今までは、同一機種内でのデータの移設が可能な機種もありましたが、異なる機種同士では移設は事実上不可能でした。では、どうすれば使うことができるのか?スペクトルを新旧両装置で比較し、両者を結びつける係数を算出すれば、移設できないでしょうか?

 こうして、開発したソフトウエアが、「TransStar(トランススター)」です。

 今回は、このトランススターを使用し、検証した結果をご紹介します。

 移設元の装置は、Technicon・InfraAlyzer500とNIRSystems・Model5000(6500)を使用し、結果を以下に示します。

 まずは、参考にそれぞれのスペクトルの違いを図に示します。各装置間でこれだけのスペクトルの差が確認できます。<図1>

 次に、実際にデータ変換し、計算した結果を図に示します。

I nfraAlyzer500からの移設結果です。サンプルは小麦粉で、灰分のデータです。上が変換前データを使用して計算した検量線を使用し測定した結果です。下が変換後のデータを使用して計算した検量線を便用して測定した結果です。変換後は、手分析値とも良く合っていることが確認できます。<図2>

 次に、Model5000からの移設結果です。サンプルは飼料で、タンパクのデータです。これも同様に、上が移設前データ、下が移設後のデータです。<図3>

 このように、新ソフトウエア「TransStar」を使用していただければ、異なる機種間においてもデータの移設が可能であることが確認できます。つまり、今まで非常に手間取っていたテータ収集を、過去のデータを有効に利用することで、より簡単に短時間でおこなえることが確認できました。

 


現地視察

京都大学日中環境技術研究講座 日中環境技術調査 現地視察

代表取締役 西村邦夫

 広東省シンセンは、上海に次ぐ中国を代表する経済特区で急速な経済発展がもたらす環境問題はますます深刻化してきています。

 2001年にシンセン市は中国の代表的な大学である清華大学、北京大学、ハルピン工業大学の環境関係の研究生院(大学院)を誘致して環境学研究の一大研究拠点を設立した。

 精華大学は3大学の中でも環境学の研究ではトップの大学です。

 京部大学大学院工学研究科は中国の環境問題が、中国国内の地域的な問題であることのみならず、日本に対する影響が懸念され、またその問題解決のために日中双方が協働して活動していくことの必要性が生じていることを認識し、環境問題の前線に活動拠点を開設すると言う事が設立に至った経緯でした。

 ビーエルテック株式会社は京都大学日中環境技術協議会の会員であり、我が社の窒素、りん測定装置オートアナライザーが今年の6月に精華大学の研究室に設置されて京都大学より派遣された管助教授、水野助手が利用して大いに役立っております。

 この度、10月19日から23日に京都大学日中環境技術研究講座一周年記念事業式典並びに技術シンポジウムが精華大学シンセン研究生院にて開催さ.れたので出席して、シンセ市内の企業も訪問してきました。

 シンセンは私が想像していた中国とは全く違っており、4から5車線の広い道路をベンツのような高級欧州車やトヨタ、ホンダ等の日本車でしかも新車が道路から溢れんばかりに走っており至る所で、交通事故や交通渋滞を引き起こしていると言う有様です。

 記念式典の日も、ホテルから大学までの途中で交通事故があり式典に遅れそうになり、やきもきした次第です。

 周囲の建物は30階以上の高層建築がいたる所に建っており、建設ラッシュで、中国特有の赤土が掘り返されているというような状態です。

 このような事情ですから、環境は非常に悪化してきております。工場や自動車からの排出ガスが大気を汚し、工場廃棄物の埋め立て処理も既に満杯となってしまっています。

 勿論、河川や周辺海域は工場や生活排水で汚染化が進んできており、1960年代の日本の公害問題に似通った様相を呈してきています。中国政府は環境汚染に厳しくなってきており、シンセン市も環境対策は最大の課題として、その浄化に真剣に取り組んでいます。

 このように、中国は環境対策に莫大なお金を投じてきており、そこにビジネスチャンスが顕在化してきており、今回一緒に行った日本企業のほとんどの企業が中国に支店や工場が有り、これからの環境ビジネスへの期待が益々高まってきております。


ドクトル海彦のオートアナライザーワンポイントアドバイス

水分析、ここが大事【コンタミ】

 CFA(連続流れ分析、continuousflowanalysis)には、以下のような、他法とは異なる大きい特徴があります。

・用手法をそのまま自動化できるため、分析法の継続性が保たれる。

・各試水とも同一流路(同一定量ポンプ)で分析されるため、反応容器、分注等からの誤差が無く、分析誤差を極少に押さえうる。

・高速で測定できるため、省力化できる。

・使用試薬量が少なく、試薬コストおよび廃液処理コストを軽減できる。

・外部から目的成分がコンタミする恐れはほとんど無く、液絡部からの混入があるとしても往時的な変化はなく、目的成分測定に問題を生じない。

 しかし、採取され、保存された試水がサンプラーへ移液される時、大気中から、あるいはサンブルカップ自体から目的成分が混入することがあります。また、サンプラー上での待ち時間中に大気中から混入することなどが考えられます。せっかくの努力が、最後の段階でコンタミしたのでは目も当てられません。

 ここでは先ず、大気中からの混入を考えてみましょう。栄養塩類分析に際し、常に汚染の危機にさらされるのは、アンモニアと亜硝酸です。アンモニアは人体の汚れや代謝物から簡単に混入しますし、亜硝酸は実験室で用いられるバーナーなどの燃焼ガスから多量に混入する恐れがあります。いずれも換気の悪い、あるいは空調された部屋などに装置を設置した場合に問題になります。

 これらのコンタミ対策は幾つか考えられます。

①サンプルカップをポリアミド系薄膜(例えば商品名クレラッブなど)などで覆い、雰囲気と遮断する。

②サンプラーを別容器中に隔離する。また、その容器に清浄大気を流しておく。

③微量分析室(オートアナライザー室)を別途に設け、測定時には常時換気する。

 ①、②では目的を達せないことが多い。配置にゆとりがあれば③がベストの選択であろう。

 リンの場合は容器等の洗浄に使用される洗剤などからの混入が考えられます。生物の必須微量成分としての測定される鉄、亜鉛、鉛などは大気浮遊粒子などから混入することが多く、微量とは云え大きい問題になります。また、適切な洗浄・保存が施されていないサンブルカップからの混入も大きい問題です。目的成分にあった材質のカップ、洗浄法、保存法に心がけましょう。試薬調製水、洗浄水などに用いる純水の純度にも気をつけましょう。できれば比抵抗10MΩcm以上の純水を使いましょう。

 サンプラーの洗浄水(純水、界面活性剤添加純水、人工海水など)がコンタミしていることも往々にしてあり、ベースラインがドリフトし、マイナスの分析値が得られることもあります。水道水からコンタミしやすい珪酸塩を測定する時などは殊に気をつけましょう。

 分析試薬も目的成分に合った出来るだけ高純度のものを用いましょう。検量線用の標準液を作製する時も細心の注意を払いましょう。(目的成分によっては市販されているものもあります。例えば、kk環総テクノス製栄養塩類標準液など)

 

発行/ビーエルテック株式会社

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