2007年4月号

飲料水ヒ素禍と分析化学

東北大学大学院工学研究科 産学官連携研究員 金子恵美子

 ヒ素を含む飲用地下水による健康被害は人類史上最大の天然汚染であり、バングラデシュやインド西べンガル地方、タイ、中国、台湾などのアジア各地域をはじめ、米国、アルゼンチン、チリ、メキシコなど世界各地にわたっている。特にバングラデシュやインドでは、数千万人規模の人々 がヒ素禍(Arsenic Crisis ) に苦しんでいる。これまでの経緯としては、1970 年代までアジア各地域では池水や河川水等の表層水が生活用水として用いられ、飲料水の細菌汚染によって赤痢などの伝染病が各地で蔓延し、数百万人もの幼児が死亡した。この事態を受けて、国際協力によって地表からの細菌汚染を避けるために深井戸が数多く掘削されたが、その多くが地質由来の高濃度ヒ素に汚染されている。人体への被害は、当初鳥脚病(black foot disease )など原因不明の風土病とされていたが、1983年にインド西べンガル地方で一人目の癌患者が診断されたことから大規模な水質調査が行われ、この地域一帯がヒ素に汚染されていることが判明した。以来ppmレべルの高濃度ヒ素が検出される事例も数多く報告されている。ヒ素は我が国にとっても決して無縁ではなく、温泉や鉱山跡地から流出する廃坑水に高濃度のヒ素が含まれるケースや地質的に地下水中のヒ素が多い地域が存在し、定期的な監視が行われている。水質基準値としては、1993年にWHOのガイドラインに基づいて日本の水道水基準値(旧0.05mg/L) が0.01mg/Lに改訂された。

 

 ヒ素禍の解決のためには、ヒ素濃度の日常モニタリングが必要不可欠である。現在、環境試料中のヒ素濃度の測定は、水素化物発生原子吸光法(Hydride Generation Atomic Absorption Spectrometry : HG-AAS)が主体であり、形態分別には高速液体クロマトグラフィー/誘導結合型プラズマ質量分析計(HPLC/ICP-MS)が用いられている。しかし、発展途上国の現地で汚染状況を迅速に把握するためにはこれら機器分析の適用は不可能であり、何らかの「簡易分析法」を併用して効率的な調査を行うことが必要である。ヒ素のフィールド分析法としては1879年にG.Gutzeit によって開発されたGutzeit法が有り、以来120年以上にわたって多くの改良法が研究され、キット化も行われている。その測定原理は、溶存状態のヒ素を還元剤によって水素化物(アルシン:AsH3)としてガス化し、臭化水銀紙と反応させて生じる褐色の反応物を標準色と比較して目視定量する方法である。但し、広範な普及のためには、有害なアルシンの発生や水銀の使用を改善し、操作ならびに使用する器具をさらに簡易化することが必要である。

 

 一方、へテロボリ酸を利用する吸光光度定量法は、グリーンケミストリーやコストパフォーマンスの観点と言える。へテロポリ酸の研究は、1826年J.Berzerius が黄色の化合物リンモリブデン酸アンモニウム(NH4) 3PMo12O40・aqの塩を合成して組成決定を行った時にその長い歴史が始まり、各種の構造決定がなされたのはその後100年以上経過してからのことである。へテロポリ酸を分析化学的視点から見ると、中心のへテロ原子をAnalyte(分析対象)として捉えることができる。モリブデン黄を還元すると、いくつかのMo(VI )がMo(V)に還元され、鮮明な青色の生成物を生じる。これをモリブデン青と呼ぶ。モリブデン青は600~800nm付近に吸収をもち、モル吸光係数は1~2×104 mol-1cm-1 Lで

モリブデン黄より5~10倍高感度である。1940年にS.Dickman らが初めてリンのモリブデン青法を報告して以来、多数の応用研究が行われ、特に20世紀後半からフローインジェクション分析法(Flow Injection Analysis : FIA)への応用が一世を風摩した。但し、ヒ素に関する報告例は比較的少ない。その理由は、同等の反応条件下でへテロポリ酸を形成するリン、ヒ素、シリカの相互分離が困難なためである。Toda らはテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH4)を用いて異なるpHで亜ヒ酸、ヒ酸を還元気化し、過マンガン酸カリウムが固定化されたメンプランフィルターに捕集濃縮し、LED を用いるモリブデン青法で分別定量する方法を報告している。

 

 我々のグループでは最近の成果として、カチオン性色素エチルバイオレットが強酸性下でモリブドヒ酸イオンと安定な青色の微粒子を形成する現象を見出し、環境水中ヒ素の高感度分析法を開発した。エチルバイオレットは弱酸性化で二価と三価のプロトン付加体として存在し、加水分解反応によって徐々に安定なカルビノール構造へと変化するために、ブランクが無色化する特徴を示す。また、さらに低濃度領域を対象として、エチルバイオレットが四塩化ヨウ素(ICI4-)とモリブデン酸(MoO42-)の存在下で形成するナノ粒子がヘテロポリ酸の高感度プローブとなることを見出している。近年、分析化学の広範な分野で新規プローブの探索が行われているが、この種の微粒子をプローブとする微量分析の報告例は見られない。新しいヒ素分析法を水道水、地下水、河川水および廃坑水に応用して各々良好な結果が得られている。フィールド分析ならびに連続モニタリング装置への導入に、今後の応用が期待できる。

 


Greetings to our customers in Japan

Stephen Coverly

 

日本のお客様へ

 

 私はビーエルテックニュースにイギリス人として初めて寄稿することを名誉と感じております。

 我が社では、日本のお客様は常に分析装置と会社に対して、高い水準のパフォーマンスを要求するとお聞きしています。

 最近、これらの要望を達成しづらい若干の問題があったかもしれません。私はこれを後悔し、迷惑をおかけしたお客様に謝罪いたします。

 さて、シール社の責任者とスタッフそして、ビーエルテック社は、私たちの全てのお客様に優秀なパフォーマンスを提供することを目的として団結しました。この20年間、テクニコン、ブランルーべ、そして現在のビーエルテック社と、私たちの日本のパートナーは、技術の熟練、革新、顧客サービスにおいて、世界中から優秀であると認められています。

 私は、今日、シール社が日本の友人、同僚と有益な関係を続けるために、再会したことを大いに喜んでおります。

 私はお客様の信頼に感謝し、私たちの会社が、いつまでも皆様に満足していただけるよう努力してまいります。

 

I feel honoured to have been kindly requested to write the first English contribution to BLTec News.

 

Within our company, Japanese customers have always had the reputation for expecting the highest standard of performance from the analyzer and the company.

In recent times there might have been some problems which made this difficult to achieve.

I very much regret this , and I apologies to any of our customers who were inconvenienced.

Now , the directors and staff of SEAL and BL Tec are united in our purpose of providing excellent performance for all our customer.

 

For 20 years the technical skill, innovation and customer service of our partners in Japan, Technicon, Bran+Luebbe and now BL Tec, have set and example of excellence which is recognized around the world.

 

I am delighted that SEAL is now reunited with our Japanese friends and colleagues to continue the trusting and fruitful relationship we have enjoyed for many years.

 

I would like to thank you for your trust in our company and assure you of our commitment to your satisfaction at all times.

 


オートアナライザーをご使用のお客様へ

 弊社では、オートアナライザーの保守及び定期点検サービスを承っております。メンテナンスサービスは弊社の専門技術者がお伺いして、装置のアフターサーピスをいたします。アフターサービス・メンテナンスについての、お問い合わせ(サーピス内容・価格等)は弊社技術部までお願いします。

(弊社のアフターサービス担当者は、ポンプチューブやトランスミッションチューブの交換まで行うトータルなメンテナンスが可能です。)

メンテナンスにおける、ラインの取替えの必要性・ラインチューブの定期的な交換。

これが安定したデータを得る秘訣です。

 ポンブチューブ(IN側)に使用されているチューブの汚れや詰まりは、アイザック現象の誘因と成ります。

 ポンプチューブ(OUT側)のチューブの汚れや詰まりは、フローに異常な圧力を与え、分節エアーの乱れや液漏れの原因となります。

 長年使用しているトランスミッションチューブやポリエチレンチューブは洗浄効果が薄れ、汚れ易くなっています。また、トランスミッションチューブは試薬や環境によってチューブの内径が小さくなっている恐れがあります。したがって定期的なチューブの取替えがアフターメンテナンスにおける重要なポイントとなります。

 当社では、定期点検の中にチューブ交換が含まれております。

表はトランスミッションチューブ番号とチューブの内径ならびに、使用されているニップルの種類です。

トランスミッション
チューブ
内径
(インチ)
ポンプ
チューブ
ニップルサイズ ニップルサイズ
116-0536-03 0.010 ORN/BLU ステンレス
ニップル
N12 116-0061-02 プラチナ
ニップル
N10 116-0028-01
116-0536-04 0.015 ORN/GRN ステンレス
ニップル
N12 116-0061-02 プラチナ
ニップル
N10 116-0028-01
116-0536-05 0.020 ORN/YEL ステンレス
ニップル
N13 116-0061-01 プラチナ
ニップル
N11 116-0029-01
116-0536-06 0.025 ORN/WHT ステンレス
ニップル
N13 116-0061-01 プラチナ
ニップル
N11 116-0029-01
116-0536-07 0.030 BLK/BLK ステンレス
ニップル
N13 116-0061-01 プラチナ
ニップル
N11 116-0029-01
116-0536-08 0.035 ORN/ORN ニップル N8 116-0003-01
116-0536-09 0.040 WHT/WHT ニップル N8 116-0003-01
116-0536-10 0.045 RED/RED ニップル N8 116-0003-01
116-0536-11 0.051 GRY/GRY ニップル N8 116-0003-01
116-0536-12 0.056 YEL/YEL ニップル N8 116-0003-01
116-0536-19 0.060 YEL/BLU ニップル N8 116-0003-01
116-0536-13 0.065 BLU/BLU ニップル N7 116-0005-01 ニップル N9 116-0010-01
116-0536-14 0.073 GRN/GRN ニップル N7 116-0005-01 ニップル N9 116-0010-01
116-0536-15 0.081 PUR/PUR ニップル N7 116-0005-01 ニップル N9 116-0010-01
116-0536-16 0.090 PUR/BLK ニップル N7 116-0005-01 ニップル N9 116-0010-01

オートアナライザー誕生50年の歴史の歩み

ビーエルテック株式会社代表取締役社長 西村邦夫

 今年はテクニコン社の研究スタッフによりSkeggs博士が開発した自動分析装置に大きな改良を加えて1957年に初めてオートアナライザーとして市場に出してから丁度50年という記念すべき年でございます。よくぞこんなに長い歳月、自動分析装置のべストセラーとして生き続けてこられたものだと感心させられます。

 

 この記念すべき年に、ブランルーべ社のアナライザー部門を買収した英国のシール社と弊社が販売及び技術両面で協力体制を整備したことは、テクニコン時代から関わってきた小生に取り万感胸にせまる思いがあります。高品質な分析装置を提供することで社会貢献を目指す幣社の理念に一歩も二歩も近づく年となることでしょう。

 

 そこで、今年は50周年ということで、1970年8月号のアメリカ化学会発行のChemical and Engineering News誌に掲載されたオートアナライザー誕生の記事を皆様に是非知って頂きたたく、以下に紹介させて頂きます。

 

 「米国オハイオ州にある在郷軍人病院は大規模な病院で、病院の検査室における検査件数は、毎月35,000件にも達するものでありました。現在オートアナライザーと呼ばれ、自動分析装置のさきがけとなった装置の生みの親ともいえるT.Skeggs博士は同病院の臨床検査室の主任ともいうべき地位にありました。

  当時としてはこの病院の検査室の設備はかなりすすんだもので有りましたが、日々要求される数多くの検査が十分におこなえないこと、また検査結果の精度にバラツキが大きい点から自動的に分析を行う分析装置の開発を始めました。

 元来臨床検査はきめられた手順に従っての繰り返しの操作であり、繰り返しの操作こそは機械のほうが正確に行えるはずです。博士自身も研究題目として高血圧症の生化学的研究をおこなっておりましたので血糖および尿素窒素の測定をしなければならない多数の試料を常に持っており、“必要は発明の母”といわれる条件がここにも存在したといえます。

 よい発明が完成に至るまでには、その発明を必要とする外的条件が常に存在しているということを示しています。 博士の考え出した連続的に試料及び試薬を一本のチューブ内に流しながら自動的に化学分析を行わせる方式の開発のきっかけは個人の努力から始まったものです。連続流れ方式と呼ばれるユニークな自動化学分析方式を生んだ博士が分析化学者でなく、臨床生理学者であったことも忘れてはならない点です。

 連続流れ方式の基本原理となった複数のポンプチューブをローラーで同時に連続してしごき、これに試料および試薬を連続して採取し、これを合流させ、気泡で流液を分節させながら反応検出器まで送る考え方は、人間の食道を通って食物が胃に送られる過程にヒントを得たといわれ、またローラーでポンプチューブをしごく方法はや食物の腸管での動きから考えついたといわれ、従来の手法による化学分析技術にこだわらない臨床生理学者のユニークな発想の面白さが有ります。

 約3年ほどかけて装置の原型ができあがりました。

 1954年のある日、テクニコン社のセールスマンが販売のために病院を訪問し、Skeggs博士から試作装置をみせられました。当時テクニコン社は自動パラフィン包装をおこなうオートテクニコンと名づけられた装置を製造販売していた会社で、ニューヨークの下町にあった小さな会社でした。このセールスマンは、早速装置について報告すべく長距離電話をニューヨークのテクニコン社へかけたのです。

 この報告に興味を持ったテクニコン社E.C.Wllltehead社長は、『とにかくその分析装置とSkeggs博士と一緒に至急ニューヨークへ連れてくるように』という指示を与えました。

 すでに別の会社と契約を結ぶ予定であった博士はニューヨーク行きを渋ったが、テクニコン社側の熱意に負けて自作の装置を車にのせて、翌日ニューヨークへ向いました。 テクニコンに到着と同時に博士に同行した夫人から採血し、無言で装置を動かし始め、それに注目するWhitehead社長らも無言でしばらくの間装置の実演が続きました。 操作が終わったところですぐ契約に進んだといわれています」

 

 その後テクニコン社はこの装置をオートアナライザーと名付け、さらにこの装置を市場に出すまでには、さらに3年の開発への努力が必要でした。

 

 博士の装置では試料や試薬を分析系に導入するために、ゴム管とそれをしごいて送液するモー夕一を用いていましたが、このゴム管やモーターを物理的化学的も耐久性のある安定した送液システムにすることが必要でした。

 

 最終的に現在使われているタイゴンチューブに達するまでに数百種の材質のものを試験しています。

 

 このようにテクニコン社の研究スタッフによってサンプラー、秤量ポンプ、透析膜、比色計などSkeggs博士の装置は大きな改良を加えられ、1957年に初めてオートアナライザーとして市場に出ることになりました。

 

 Whitehead 社長の話によると、始めは全世界で600台も売れればよいと考えられたこの装置が、初年度の1957年で50台、1963年には4000 台、1969年には18,000台と世界各国で使い出されたのです。

 

 このような長い歳月、自動分析装置のべストセラーとして生き続けてこられたのは、気泡分節を用いた連続流れ方式で分析されたデータの高い信頼性と、夫々の時代に出現してきた、新しい技術を取り入れ常にその可能性を追求していくという姿勢をもち常に進化しし続けてきたからです。

 

 最後に、この装置の素晴らしいのは、この装置の進化へのチャレンジに多くの外部の研究者や技術者がその役割を担ってきたと言う事です。

 

発行/ビーエルテック株式会社

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