オートアナライザーへの想い

相談役 眞鍋武彦

 学部を卒業したばかりの駆け出しの昭和41年頃、当時兵庫県水産試験場で海域汚染分析に携わっていた私にとって最も途方に暮れていたのは海水中に含まれるアンモニアの定量でした。ネスラー法が主流で、ぼつぼつインドフェノール法が使われ始めた頃であったと思います。いずれもアルカリ側の反応であるため、塩類の多い海水の分析では沈殿を生じ、多くの問題を抱えたままでの定量でした。この沈殿をマスクするためのキレート剤としてEDTAに着目し、新しいアンモニア定量法開発に着手したのもこの頃でした。その成果を抱えて昭和42年度日本水産学会秋季大会(近畿大学)に臨み、新しい手法としての評価を得ることができました。基本的な研究姿勢に関する多くに示唆を得たのもこの大会参加の大きい収穫でありました。その翌年4月、日本大学での同学会春季大会の折、当時同大学の大学院に在学していた従兄から、‘オートアナライザーという素晴らしい装置が開発されているよ,と聞いたのがオートアナライザーの名を聞いた最初でした。その年の夏研修のため国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)に滞在していた折り、同じくその研修に参加していた東京都庁の職員から、‘うちにあるから来いよ’との誘いで出かけた東京都庁(当時は有楽町にあった)の物置のような所で眠っていたのがオートアナライザーBASIC型で、これがオートアナライザーとの初めて出会いでした。昭和46年にBASICとⅡ型を組み合わせた2チャンネル装置を導入したのが水産試験研究機関での利用の最初であったと記憶しています。水産庁からの補助などもあり以降の我が国での海洋水質分析の基準装置としての普及は周知のことと思います。メーカーも当初のテクニコン社から紅余曲折を経てビーエルテック株式会社に引き継がれ、さらに大きい飛躍が期待されているところであります。

 

 この間、オートアナライザー利用者の情報交換会設立の動きが大きくなり、筆者らを発起人とした初期のオートアナライザー研究会は昭和54年に発足しており、それから数えると今年でちょうど25年になります。改組後の研究会が計10回、初期も含めると計16回になります。過去のいきさつもあり、当初から筆者が座長を務めさせていただきましたが、本年度からBLテック社の相談役を務めることになったことを期に若い世代に座長役をお任せしたいと鹿児島大学の前田教授にこ相談したところ、快く引き受けていただけることとなりました。今後は裏方に回り、色々のお世話をさせていただきたいと存じます。どうかこれまで同様よろしくお願いいたします。

 

 筆者は(財)ひょうご豊かな海づくり協会但馬栽培漁業センター所長として、また兵庫県但馬沖での深層水総合利用構想の立案者として、この1年ほどは但馬地域での仕事がほとんどになります。遠くはありますが、ライフワークとして、オートアナライザー信奉者として何はおいても駆けつける所存です。どうかよろしくお願いいたします。

 


ビーエルテックニュースの発刊にあたって

相談役 前ブラン・ルーベ社長 戸田敏明

 

 1968年2月にテクニコン・コーポレーション日本支社が東京に設立されました。わが国における自動化学分析技術の夜明けと言えるかと思います。当初のテクニコンは臨床生化学の血液分析という医療分野を対象とした分析システムがメインビジネスでした。しかし、当時の産業界において、生産管理の中で時系例的な分析データに対する顕在的な要求、また研究分野においても多数試料を人海戦術により消化せざるを得ない状況から高精度で、かつ高信頼性の自動化学分析技術が渇望される状況でした。

 

 テクニコン日本では1970年代にフロンティア・スピリットを持って肥料工業・醗酵工業・医薬品工業・海洋調査業務等における自動化学分析技術の応用にチャレンジする事となりました。しかしながら医療分野での自動化学分析技術は多少認識されていましたが、これ等の産業分野においてはほとんど認識されておりませんでした。従って、それぞれの顧客に自動化技術を認識頂いても、顧客試料について、分析メソッドのアプリケーションと、その後に、その試料による再現性精度と正確度の立証が必要とされました。またシステムを採用頂けたお客様に対してシステムトレーニングは必須とされてきました。この自動化学分析技術の顧客に対する最適化の販売方法は、その後も一貫して継続され現在に至っております。その普及・発掘の経過の中から環境水については、水質分析法としては以下の表の様に公定法としての実績が構築されたのです。

図書名

『海洋環境調査法』

『湖沼環境調査指針』

『環境測定分析法註解』

『下水試験方法』

『河川水質試験方法(案)』

『海洋観測指針』

『上水試験方法』

 

監修又は編集先

日本海洋学会

(社)日本水質汚濁研究協会

環境庁企画調整局

(社)日本下水道協会

建設省河川局

気象庁

(社)日本水道協会

 また、近赤外分光分析技術についても、わが国では一部の分野ながら公定法として採用されるに至っておりました。この様に皆様のおかげで30年以上自動分析機器事業が発展して来ましたが、その裏側ではテクニコンとブラン・ルーべの時代を通算すると、その株主は10回近く変遷されてまいりました。但し、それ等多くの株主は自動化学分析技術を先端産業として位置付けし、かつその発展性を評価して買収が行われたのでした。その結果日本の経営については、日本人スタッフによる日本市場環境に適応する運営が行われ、 順調に推移して来た事は既に皆様にはこ承知の事と思います。しかし残念ながら、2001年にブラン・ルーべGmbHの所有する産業ポンプ事業に着目した米国SPX社にブラン・ルーべ全体の買収が決定し、分析機器事業の分割譲渡案が実行に移されることになりました。その事業の買収に興味を持ってオファーして来た数社に対しての譲渡額があまりにも大きく提示されたために、結果的には失敗に終わるということになりました。その後、新株主は利益性の薄い近赤外分析機器事業を突然に停止するという決定と共に 、ブラン・ルーべ各経営組織に対して事業縮小に伴う不合理なリストラ案をつきつけて来たのです。ブラン・ルーべ株式会社(日本)の当時の経営スタッフは、長期的にも日本市場ユーザーの方々の私益を守る意向からリストラ対象のスタッフ独自によるビーエルテック株式会社の設立を歓迎し、ブラン・ルーべ製品代理販売の業務基本契約を締結しました。

 

 また同時にドイツ工場から供給の受けられない製品の国内生産についてもビーエルテック株式会社に期待することとなりました。そしてこれまでの間、ブラン・ルーべ株式会社とビーエルテック株式会社はダブルロゴのカタログにより相互補完の形で推移して来ました事は皆様にはこ承知の事かと思います。

 

 この間にも新株主SPX社の分析機器事業に対して熱意のない経営姿勢に失望した幹部社員を含めた多数のブラン・ルーべ社員がビーエルテック株式会社に移籍しました。

 

 ブラン・ルーべ株式会社は蓄積した事業ノウハウの損失を守る結果としてブラン・ルーべ株式会社とビーエルテッ立株式会社双方の経営方針に軋轢が生じて両社の業務基本契約は解消する方向へ向かう事となったのです。

 

 従ってビーエルテック株式会社はブラン・ルーべ株式会社とは快を分かち、開発力のある独立した分析機器輸入販売ならびに国内製造販売も併せて行う事業会社として再スタートする事となった次第です。

 

 テクニコン-ブラン・ルーべ時代を通じてのフロンティア・スピリットに併せて、その技術を利用頂く事による利便性と共に満足を頂けるコンセプトを附随した製品の開発、製造・システム販売・消耗品供給・点検修理を含むアフターサービスまでの一貫した、自動分析技術についての専門企業を目指している事は言うまでもありません。

 

 短期日ながらもその基盤は既に築き上げていると自負しております。

 

 ここにビーエルテック・ニュースの発刊に併せて、今後共皆様方の温かいご指導とこ鞭推のほど宜しくお願い申し上げる次第です。

 


BLTEC社近赤外分析計のご紹介

 近赤外分析法はサンプルの内容成分量や特性を、近赤外線を用いることで非破壊かつ迅速に測定する光を用いた測定方法です。この近赤外分析法は1970年代米国農務省のDr.力ールノーリスらによリ、農産物や食品中の主要成分である水分、夕ンパク、脂肪分などを非破壊で迅速に測定できる品質管理用機器として実用化されました。

 

 日本国内では1970年代後半から導入が始まリ、小麦粉やス夕ーチ、食用油脂工場の原材料試験、製品管理などの分野で広く利用され、また醤油のJAS格付検査、サトウキビの糖分取引などの公定法として採用されたことにより最終的には1千台を越える近赤外分析計が国内の現場に導入されました。

 

 その後90年代後半から近赤外分析法の利用は石油化学工業、石油精製、製薬工業にも波及し、実験室のみならずオンライン測定にもさかんに用いられるようになりました。

 

 それに伴い近赤外分析計は様々な高度な機能が付加されるようになりました。オンライン測定のための光ファイバーの利用や、分光方式も赤外分析計の技法を転用したフーリエ変換方式や超高速測定を可能にした音響光学素子(AOTF)をもちいた装置も実用化されました。

 またデータの解析も日常的に用いる定量分析のみならず、様々な研究にも使える高度な数学的統計手法をもちいたクラス夕一解析やPLS回帰分析といった技法が次々に取り入れられました。

 

 このようにして目覚ましい発展を遂げた近赤外分析計ではあリますが、一方では近赤外分析計の最も数多い利用者である食品、農業分野等の品質管理担当者が手軽に気兼ねなく現場で使用できる、精度の高い定量分析用の装置の新たな開発には、近赤外分析計の各メー力とも近年それほど熱心ではなく、ときにはこれらの装置の製造中止も各社で相次ぎました。

 

 その結果、近赤外分析計の最も大切なこれらの分野の顧客から、もっと身近で使いやすい普及型近赤外分析計の再販の要請が世界中でありました。

 

 ビーエルテック社ではこれらの要請に応えるべく、近赤外分析計の原点である現場型普及機の新たな開発と販売を再開しました。最もこれらの装置は単に古い装置のコピーではなく、現在的技術でセンサーや日常データ管理用の機能を強化しながら、製粉現場のような粉塵の多い環境でも安心して使用できる対応を施した真にユーザーニーズに即した新しい近赤外分析計です。

 

 ビーエルテック社からは国産の近赤外分析装置インフラスター460型(干渉フィルタータイプ)と米国Unity Scientific社(ビーエルテック社の盟友)のスペクトラスター2400型(回折格子タイプ)の2機種を新たにリリースします。

 

発行/ビーエルテック株式会社