土作りの推進と堆肥の品質表示の重要性

オートアナライザーが果たす役割

愛知県農業総合試験場大竹良知

 

 昨年(2006年)12月に「有機農業の推進に関する法律」(有機農業推進法)が施行された。大変珍しいことに議員立法でできた法律である。続いて、今年4月には「有機農業の推進に関する基本的な方針」(基本方針)が公表された。

 既に一般消費者の問では、有機農業は選択肢の一部、あるいは選択したい農産物として定着した感があるが、実際の流通量はごく少なく、上記の「基本方針」でも有機農業の推進に関して技術を初めとする様々な施策を通じて支援する必要性を強調している。

 技術的な面での支援が強く求められる内容の一つに、土壌の条件にあった堆肥の施用設計を可能にする、堆肥と土壌の安価な成分分析の手法の開発が挙げられる。

 土作りと言うと堆肥、と連想するが、実は堆肥の施用量や使い方は生産者にとって結構難しい問題である。自家堆肥は止むを得ないとして、流通している堆肥でも成分表示の無いものが多いため、施肥設計が立てられず、勘でやった結果、成分の過多過少が起こった事例をしばしば聞く。堆肥が供給し得る養分量と土壌が必要とする養分量の双方が分かれば、このような問題は回避でき、生産安定に向かって一歩前進できる。

 有機農業に限らず、農薬や化学肥料を用いている現行の農業においても土作りの重要性は同様であり、堆肥と土壌の成分分析が強く求められる所以である。

 堆肥の成分分析を畜産業の側から見た時には、堆肥の流通促進の問題として理解できる。平成16年10月末を最終期限とする家畜排せつ物の野積み・素掘りを禁止する法律の施行により、畜産農家からの環境への排出は基本的になくなった、と考えられているが、できた堆肥を自ら投入すべき農地あるいは販路を持っていない農家にとっては、唯肥保管の場所・経費などが大きな問題として出て来ている。できた堆肥が耕種農家に使ってもらえればよいが、十分に腐熟していないため耕種農家等から敬遠される粗悪な堆肥は別として、完熟堆肥でもうまく流通しているとは言いがたいのが現状である。

 一方農水省のアンケート調査(平成16年)では、農業者の9割が堆肥の利用を希望しており、耕種農家の側から堆肥の需要がない訳ではない。同じアンケートの中で、4割の農業者が、「成分量が安定した堆肥」、「成分量が明確な堆肥」の利用が今後進むと回答していることから、堆肥の成分表示がなされれば、これまで堆肥を利用していない農家への流通促進が期待できる。

 以前は、土壌の成分分析において主要な成分は、全窒素、全炭素、塩基置換容量、リン酸吸収係数などであり、堆肥では全窒素が多かったが、これらの成分のどれも、分析に時間と経費がかかるため、近赤外分光法で推定する手法の開発が試みられ、一定の精度で推定できることが示されてきた。

 最近は実際に施肥設計に用いるための可給態窒素(窒素無機化量)の測定を求める声が強くなり、硝酸・アンモニアの効率的な測定法が重要となっている。

 ただ、堆肥の価格や単位面積あたりの農産物の販売額から見て、余り高い分析経費は生産者に受け入れてもらえない。将来的には、堆肥・土壌の可給態窒素(窒素無機化量)も近赤外分光法で推定するシステムが確立し、低コストでの成分表示が可能になると期待されるが、当面は培養前後の硝酸・アンモニアの測定をいかに効率的に行うかが堆肥・土壌の可給態窒素測定を推進するための鍵になるだろう。

 硝酸・アンモニアの定量は、現在イオンクロマトで行っている例が多いが、この方法では、時間当たり6点程度しか測定できない。また塩化カリ抽出液そのままを用いることができず、前処理に要する時間と労力も問題となる。オートアナライザーは、時間当たり60点処理することが可能であり、しかも塩化カリ抽出液そのままを用いることができるため分析経費の低減効果が大きい。

 また、オートアナライザーによる硝酸・アンモニアの分析数値は信頼性が高く、近赤外分光法用の検量式作成過程での利用効果も大きいと考えられる。

 堆肥がうまく流通する資源循環システムの中での土作りが進展し、有機農業の推進に寄与するよう、オートアナライザーが果たす役割に期待したい。

 

 


近赤外分析計スペクトラスター2400型のご紹介

 

 

 過去のデータ(検量線)が移設できるので、近赤外分析計の更新が容易になりました。ブラン・ルーベ社インフラライザーシリーズのみならず、他社の近赤外分析計の検量線も移設可能です。

 

 近赤外分析(NIR)の利用がはじまって30年が経とうとしています。これは、実運用の最初のターゲットが穀物であった事を考えると、農業分野での歴史とイコールになります。つまり、それだけ有効なデータベースの蓄積が多いといえます。その歴史を振り返りますと、最初、NIRといえばフィルターで分光する方式でした。時が進むにつれ、様々な分光方式が登場しました。まず、回折格子型。この方法は、走査型の分光器では、ベーシックな方式で、現在では価格も安価になり、いちばん熟成された方法です。次にフーリエ変換型。現在、様々な分光器で利用されはじめてきており、ポピュラーな方法になりつつありますが、波長の表記が、cm-1(カイザー)表記される為、波長方向の単位をnm換算した場合、一定間隔にならないなど、従来のNIRとは違う印象があり、困惑する場合があります。その後、音響光学分光(AOTS)、マルチスキャンFT、ダイオードアレイ等、技術の進歩によって様々な分光方式が生まれました。また、解析の分野では、各ソフトメーカーとも、コンピュータの進化もあり、より複雑な計算処理が可能になりました。そして、スペクトルデータは、どのメーカー同士でも互換性のある形式に変換ができ、データのやり取りは可能になっています。しかし、ハード側の各装置間のデータの互換性については、どの機種間であっても困難で、実際におこなわれている例は非常に少ないです。これは、非常に不幸なことといえます。何故なら、NIRは検量線(データベース)を構築しなければ、利用価値は無いにも等しいので、データの互換性が無いとなると、機器の更新ができなくなる、逆に言えば、更新をすればデータベースの構築をし直す必要があるからです。これは、いくらコンピュータが発展し解析が迅速にできたとしても、サンプルを収集する必要性があるので、すぐに構築は不可能です。さらに、最近では、検量線解析時にスペクトル処理をおこなってから、計算させたり、PLS回帰など、高度な解析をすることが多く、この場合、検量線だけの移設が不可能なのが実情です。

 

 幸い、ビーエルテックでは、これらの問題に対して、一つのご提案をすることができます。それは、「TransStar(トランススター)」です。これは、ソフトウエアの名称で、データベースを移設できるソフトウエアです。では、具体的に、どうすれば良いのかをご説明いたします。必要なものは、◎旧装置,◎新装置,◎旧装置での検量線作成時のデータ(手分析値付),◎検量線と同系統のサンプル(10~30点),◎「TransStarソフト」です。(これからも、分かる様に旧装置が稼働していることが絶対条件になります)

 

①まず、旧装置と新装置で同じサンプルをデータどりします。このとき、同じサンプルカップであれば、なおOKです。

②次に、それぞれ、採ったデータをひとつのコンピュータに集め、「TransStar」を用いて計算をおこないます。この計算は、各波長におけるスペクトル吸光度の違いについておこなっています。

③これらの計算結果を用い、旧装置での検量線作成時のデータを、新装置で測定した様なデータに変換します。

④最後に、変換したデータを用いて、検量線の計算をおこないます。これで、完了です。

 

<以下にこのソフトの利点をまとめますと>

①検量線作成用のサンプル収集が、10~30点ほどでOK。(通常は、最低50実質100サンプル以上)

②旧検量線の計算に、スペクトル処理やPLS回帰などを使用していても、基礎データを移設し計算し直すので、問題がない

③旧装置と新装置が異なる光学系でも、移設が可能(ただし、測定波長領域がある程度オーバーラップする必要がある)検量線の移設について、お問い合わせ下さい。デモンストレーションも可能です。

 


アミロース測定用オートアナライザー

 

 

 従来、米のアミロース分析では、620nmの波長吸光度を測定し含有率を算出していましたが、近年アミロースとアミロペクチンの比率により、最大吸収波長が異なるのではと言われております。そこで最適な波長の組み合わせでの吸光値が得られる多波長型比色計(SPARCーⅡ)をオートアナライザー用検出器として用い、解析はケモメトリックスを有したSPARC-SWAANソフトで行なうことで真の含有率算出が得られます。

 

■システムの特長■

 

●気泡分節型連続流れ分析法を用いたヨウ素澱粉反応によりアミロースの定量測定が可能です。

●国内で開発致しました固体処理サンプラーにより米粉から直接、前処理(米粉の溶解)を含めた全自動測定が可能です。1バッチ20個のサンプルカップが装備されておりますが、最大1000サンプルまでの連続測定が可能です。また、米粉を溶解させる為に、ホモジナイズ処理を行いますが、処理条件等は新型データ解析ソフトウェアSPARC-SWAAN(日本語対応)より設定が可能です。

●SPARC-SWAANでは、分析中にリアルタイムで分析値及び吸光度値、検量値、ピークチャートが同時にパソコン画面上で確認出来ます。また、分析中、スケールオーバーしたサンプルにおいては、分析値の推定値算出が可能な為、次回の再測定時の希釈率を把握出来ます。

●サンプル処理速度としては、100mgの米粉で1時間当り、20サンプルになります。

●多波長型比色計SPARC-Ⅱでは最新のフォトダイオードアレイ光学系を装備し、測定波長領域は400~900nmになります。多波長での測定が出来き、その際はケモメトリックスを駆使した解析法で含有率を算出致します。また従来の測定波長である620nmでの測定も出来ます。

 


土壌分析装置AQ2+アナライザー(ディスクリートフローアナライザーAQ2+)

ビーエルテック・英国シール社

 

 

 ディスクリートフローアナライザーAQ2+は,土壌中に必要とされる栄養成分(硝酸態窒素(NO3-N)亜硝酸態窒素(NO2-N)アンモニア態窒素(NH4-N)リン酸態リンPO4-Pなど)などの迅速分析を目的とした自動比色分析装置です。従来の手分析方法に準拠した方法で、1台で多項目の測定が可能です。さらに他の比色分析項目(K、Mg、Ca)の追加も可能です。

 

■特長■

 

1.多項目の測定が可能です。硝酸態窒素(NO3-N)亜硝酸態窒素(NO2-N)アンモニア態窒素(NH4-N)リン酸態リンPO4-P等の多項目の分析を1台で行うことができます。

2.自動化・省力化に役立ちます。秤量・希釈・混合・加熱・発色などの煩わしい操作を最小限にとどめ、試薬等によるランニングコストを低減させることができます。また測定終了後のシステム自動洗浄も組み込むことができます。

3.高精度で幅広いワイドレンジを確保しています。自動希釈・再検機能の充実で検体数・項目の多い場合でも、迅速に分析が可能です。

4.少量の試料を用いることで、濾過の前処理労力を削減します。試料の量が少なくて(1項目1ml程度)すむので、濾過の手間が少なくてすみます。実際の操作ではピペット型の簡便な濾過ですみます。

5.煩わしい硝酸の還元はカドミコイルを用いることで、手間なしで処理できます。ライン中にカドミ還元カラムを挿入することができます。

6.自動化に最適な分析方法が提供されます。オートアナライザーで培ったビーエルテック社のノウハウにより、試薬や分析方法が自動化に最適なメソッドを組み込んで提供されます。

7.コンパクトボディーで省スペースを実現幅はわずか68cm、軽さは40kgと、軽量・省スペース設計です

 

■測定フロー■

 

(手作業)

土壌計量(少量)⇒抽出液添加(少量)⇒攪拌⇒濾過(少量)⇒AQ2+サンプラーへ

 

(自動化)

AQ2+による自動化サンプル秤量⇒発色試薬秤量⇒発色試薬添加⇒混合⇒加熱⇒比色測定⇒濃度計算

 

 AQ2+システムはディスクリート分析装置と連続流れ分析装置(オートアナライザー)のそれぞれの長所を組み合わせた全く新しいシステムです。

1)測定方式が異なる最大7項目の比色測定を一台の装置で測定出来ます。

2)毎時150テストの高処理能力を実現しています。

3)簡単な操作で測定ができます。

4)分析対象や分析項目に合わせた組み合わせが可能です。

5)面倒な希釈操作を自動化、スピーディな測定、自動希釈機能。

6)指定した倍率で自動希釈できますので、高濃度検体の希釈自動再検ができます。

7)自動キャリブレーション可能。検量線を自動的に希釈して最適な濃度の検量線試料を自動的に作成します。

8)容易なメンテナンス少ない交換消耗部品。

 

 ディスクリート方式とは、用手法をそのまま自動化したもので、試料はピペットにより計量され、計量された試薬と共に反応容器で混合されます。混合液は、加熱槽で一定温度に加温されながら反応が進み発色する。これを比色測定し、目的の成分濃度を算出するシステムです。臨床関係の測定・検査には殆どの機関でこのディスクリート方式が採用されています。

 AQ2+はこのディスクリート方式の分析装置にフローセル型の比色計を組み合わせたシステムです。臨床関係の検出器よりも遥かに高精度で長いレンジの測定をカバーしています。

 またランニングコストも安価におさえる事ができます。

 

発行/ビーエルテック株式会社