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連続流れ分析法による土壌中の全シアン及び チオシアン酸イオンの同時分析装置

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連続流れ分析法による土壌中の全シアン及びチオシアン酸イオンの同時分析装置

環境技術評価研究所 野々村誠

■ 土壌中の全シアン含有量の測定
一般に、土壌中の全シアン含有量の測定は底質調査法1)で定められており、土壌の一定量を直接蒸留フラスコに入れ、JISK01022)に準拠してアミド硫酸アンモニウム、リン酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を添加し、全シアンの蒸留を行う方法である。
また、環境庁告示第 18 号は土壌の溶出試験を行った後、上記と同様に JISK0102 の全シアンを測定し、第 19 号は、土壌の含有量試験であるが、遊離シアンを測定する方法である。シアン化合物による汚染状況の把握、汚染土壌の浄化においては、土壌中に含まれる全シアン濃度を正確に測定することが必要である3,4)。
しかし、模擬土壌にフェロシアンを添加して底質調査法で全シアンの回収率を調べた結果、回収率は 50 %未満と低く、また、データーもばらつき、土壌中の全シアンを正確に測定することができなかった5)。そこで、Standard Method(SM 法)、International Organization for Standardization(ISO 法)及び JISK0102 で全シアンの分離に用いられている試薬について検討した結果、塩化第二銅と塩化第一スズを使用する蒸留法(NSOF 法)が有効であることを報告した5)。本蒸留法は、模擬試料に添加したフェロシアン、フェリシアン、プルシアンブルー、シアン化銅及びシアン化カリウムから全シアンを 90 %以上回収可能で、実汚染土壌からの全シ
アンの回収率も 90%以上であった。

■ NSOF 法の連続流れ分析(CFA)法への適用
NSOF 法は、底質調査法1)では回収困難な鉄シアノ錯体やプルシアンブルーなどの難分解性の金属シアノ錯体中の全シアンを定量することが可能であったが、蒸留と測定に 1検体当たり 3 時間程度を要し、土壌調査のモニタリング等で大量に発生する検体を分析するには、時間がかかり過ぎるという課題があった。そこで、土壌中の全シアンを蒸留分離し、自動測定して、多試料を短時間で測定するためにNSOF 法を CFA 法に適用し、土壌試料も測定可能な連続流れ分析(CFA)装置の開発を行った6)。
CFA 装置は、土壌中のシアン化合物をアルカリ溶液に超音波抽出する工程と全シアン及びチオシアン酸イオンを分析する工程で構成される。抽出条件は、土壌試料 1.0 g を採取し、0.05 mol L-1水酸化ナトリウム溶液50 mLを用いて、超音波で 80 秒間抽出すると、全シアンは 86%以上回収された。蒸留試薬は既報5)の NSOF 法に準拠し、145℃で連続的に蒸留した。NSOF 法を CFA 法に適用すると全シアンと共にチオシアン酸イオンも蒸留で回収され、4 -ピリジンカルボン酸-ピラゾロン吸光光度法でシアン化物イオンと同様に発色することが明らかになった。そこで、全シアンは4 -ピリジンカルボン酸-ピラゾロン吸光光度法、チオシアン酸イオンは、チオシアン酸第二鉄吸光光度法で測定し、全シアンとして得られた含有量よりチオシアン酸イオンによる寄与分を差し引いて、土壌中の全シアン含有量を求めた。本法で、土壌中の全シアンとチオシアン酸イオンを同時分析することができる。なお、シアン汚染土壌には、シアン化合物だけでなくチオシアン酸塩も含まれることがあるので、この両者を測定することは、土壌汚染の状況を把握する上で重要である。

■ 本装置の特徴

①本装置法は、土壌中の鉄シアノ錯体やプルシアンブルーなどの難分解性の金属シアノ錯体をアルカリ溶液に超音波抽出した後、全シアン及びチオシアン酸イオンを同時分析することができる。
②本装置法では、難分解性の金属シアノ錯体からも 89 〜102%の全シアンが回収された。また、チオシアン酸イオンについても100%回収された。
③本装置は、1 時間で 20 検体を連続して自動的に測定することができ、多試料を迅速かつ簡便に測定することが可能であり、土壌汚染のモニタリング、シアン化合物の分析に貢献すると考える。

(謝辞)
NSOF 法は、土壌中の全シアンの蒸留分離方法を開発した新日鉄エンジニアリング㈱(当時)、大阪ガス㈱及び㈱不動テトラの頭文字の略称である。また、本装置は、新日鉄住金エンジニアリング㈱、大阪ガス㈱及び ㈱不動テトラとビーエルテック㈱が共同で開発を行った。野口和宏氏を始め関係者各位のご協力に感謝いたします。

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