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製粉と近赤外分析法

製粉と近赤外分析法

近赤外分析とは?

近赤外分析法(以下NIR法と略す)は、ランバートベアを基本原理とする吸光光度法の一つである。2002年3月20日に制定された近赤外分光分析通則JIS K 0134によると、その波長域は700~2500nmで、無機物及び有機物の定性分析又は定量分析を行うと規定しているが、ここでは、定量分析について述べる。

その原理は、近赤外光を照射された試料が吸収するエネルギーをスペクトルに換算し、そのスペクトル形状を基に測定するものである。スペクトルは試料の有する様々な官能基の強度を表す。近赤外光は、あらゆる電磁波の中で最も人体に無害な光であり、身の回りではテレビやエアコンのリモコンに使用されている。現在、NCI(米国がんセンター)でIR700という色素をつけた抗体を静脈注射し近赤外光を当てるとがん細胞が破壊されることが発見され新しい医療法として研究が進んでいる。

電磁波の中で光とは、紫外(10~380nm)、可視(380~780nm)、近赤外(780~2500nm)、中赤外(2500nm~25000nm)、遠赤外(25000~1000000nm)を指す。この近赤外領域は冒頭のJIS通則のそれとは異なり、国際規格ASTM E131-00に合わせたものである。ISO12099によると770~2500nmとなり各機関により若干の差異がある。

NIR法

NIR法は、前処理不要の非破壊測定で、塊体(かいたい)、固体、粉体、液体、ペースト状、高粘性試料等が対象であり、多項目同時測定を30秒以内に行なう。試薬不要でケルダール分析に必要な硫酸のような試薬を使わないで済むことから、安全な分析技法として知られている。測定濃度は通常0.01%(100ppm)以上である。

近赤外分析 原スペクトル例図1 原スペクトル例

原則的に、官能基(C-H、0-H、N-H、S-H、C=O等)を有するものを測定対象とする。NIR法は赤外分析法が用いる基準振動ではなく、倍音、結合音を利用して測定する技法である。例えばC-H結合は690~3000nmの波長域で8回の吸収ピークがある。長波長側から1回目の結合音、1回目の倍音、2回目の結合音、2回目の倍音というふうに繰り返され8つのピークが見られる。
赤外法に見られるC-Hの基準振動とNIR法に見られる倍音との関係性を次に示す。

相対強度透過
基準振動3380~3510nm1000.01mm
第1倍音1690~1755nm11mm
第2倍音1127~1170nm0.11cm
第3倍音845~878nm0.0110cm
第4倍音690~780nm0.00510cm

近赤外分析装置

あらゆる分析において、検量線はユーザーにとり満足のいくものでなければならないのは当然のことである。そのためには優れた装置性能とユーザーの正確なラボ値が要求される。優れた装置性能とは、最適な波長範囲、正確な波長精度(波長再現性)、高SN比、低ノイズ、操作の容易性を具備するかどうかで判断することになる。

1 最適な波長範囲

近赤外領域は780~2500nmであることは述べた。またC-Hの結合音と倍音は690~3000nで8回の吸収があることも述べた。できればその領域をカバーできる装置がベストということになる。スペクトラスターXTRは680nm~2600nmのスペクトル情報を提供する。

スペクトラスターシリーズは、2500nmから2600nm間に見られるアルデヒド基やケトン基、芳香族化合物などの吸収を補足するので測定精度向上に威力を発揮する。

2 正確な波長精度

波長には正確性とその繰り返し再現性である精度が要求される。中赤外光では基準振動によるシャープな吸収ピークが現れるのに対し、近赤外光は倍音、結合音によるなだらかな吸収ピークの中に重要な情報が含まれる。
NIST(米国標準技術研究所)は、近赤外スペクトルの波長軸を統一するために、1SO認証規格1920aの特殊なセルを有している(図2)。

NISTのセルSRM1920a図2 NISTのセルSRM1920a

図3はそのセルの近赤外スペクトルである。各メーカーにおいて自社装置がNISTトレーサブルと主張してはいるが、実態は工場の親機のみがNISTトレーサブルで、出荷する装置は親機のコピーである。スペクトラスターシリーズは出荷する全装置がNISTトレーサブルを保証している。これはTrue NIRと言い、スペクトラスターの基本概念のひとつである。

図3 SRM1920aによる近赤外スペクトル

3 高SN比、低ノイズ

近赤外スペクトルはなだらかなピークの中に様々な情報を含み、それを統計処理して測定結果を出すため高いSN比が要求される。特に微量成分測定ではノイズが小さいことが必須となる。各メーカーはできるだけノイズを小さくすることにしのぎを削ってきたが、現在ではスペクトラスターが世界最高の高SN比、超低ノイズを有する装置である。

下記に各社のノイズ比較を表す。(図4)図中SSXT3はスペクトラスターを意味する。他社との比較の為1100~2500nmに波長を合わせた。

ビーエルテックの近赤外分析装置 他社とのノイズ比較図4 他社とのノイズ比較

B及びC社はFT-NIRを採用し、A社は回折格子型である。FT-NIRは波長精度では良好なもののノイズが極めて大きいことを図4が示している。ノイズが大きいと微量成分の測定は困難になる。

スペクトラスターXTRは1100~2500nmの全域で15μAU以下、680~2600nmの全域で20μAU以下の驚異的な低ノイズで、SN比は前者が125,000、後者は100,000を保証する。他社はこれより一桁もしくは二桁SN比が小さい。

製粉業界における近赤外分析

製粉は、穀類を粉にする事業であり、小麦粉やそば粉、スターチ業界などがある。小麦粉やそば粉のNIR法の利用は蛋白、水分、灰分測定がメインであり、コーンスターチにおいては配合飼料の原料となる副産物のグルテンミール、ジャーム、フィードの蛋白、脂質、水分測定に多く利用されている。 ここでは小麦粉のNIR法利用例について記述する。

小麦横断面図図5

上記3では他社と比較するため便宜上共通の波長域1100~2500nmを提示した。しかしながら、高精度で灰分を測定するには、680~2600nmの波長域を有するXTRが適する。図5より小麦の胚乳部分は、中心部に行くほど灰分と蛋白が少なくなり、色も白くなっていく。特等粉、1等粉、2等粉の順に灰分は多くなり、灰分測定の重要性はそこにある。すなわち灰分と小麦粉の色合いとは相関があると言わざるをえない。そのためには可視光680nmからのスペクトル情報が必要となる。

図6及図7は、蛋白の手分析値と近赤外分析値とのプロット図である。

蛋白の主な帰属波長は、1980nm、2050nm、2180nmに見られるようにNIR法では極めて正確に測定できる。また、水分も、1450nmと1940nmにそれぞれ倍音、結合音の特徴的なピークが見られ、その測定正確性は言うまでもない。それでは一般的に近赤外吸収がないと言われる無機物である灰分が測定できるのはなぜであろうか。これにはふたつの理由が推測できる。

ひとつは小麦の生育過程で土壌から吸収するミネラル成分が胚乳との間に化合物に近い状態(会合)で存在していること、もう一つは超低ノイズレベルの装置性能と680nmからの可視スペクトル情報である。

強力粉 蛋白図6 強力粉における蛋白の相関図

強力粉 灰分図8 強力粉における灰分の相関図

薄力粉 蛋白図7 薄力粉における蛋白の相関図

薄力粉 灰分図9 薄力粉における灰分の相関図

おわりに

海外では、牛の給餌であるフォーレージ(牧草)のリン、カルシウム、カリウム、マグネシウムのミネラル成分のNIR法利用が一般的であるが、製粉においても更に新しい項目のニーズが生まれるかもしれない。その期待に応える装置はスペクトラスターXTRである。

参考:木下製粉株式会社様(小麦のはなし)

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