弊社が酸分解前処理装置DEENA(ディーナ)の販売を始めて3年が経過した。金属前処理装置販売の知識や経験が何もない弊社であったため、最初は手探りで始め販売啓蒙活動も、3年が経過した今では、アプリケーションや分析ノウハウも多く蓄積され、顧客の分析前処理ニーズに合わせた提案をできるまでになってきた。これまでに培ってきた分析事例の一例を、以下に紹介する。
DEENAの特徴
試薬の添加、撹拌混合、加熱加温、冷却放冷、内部標準試薬の添加、メスアップに至るまでを全自動で行うことができる装置である。
飲料水分析
● 分析手法
試料分取→硝酸添加→加熱(容量が1割以上減少するまで)→放冷→メスアップ
● 特徴
ヒュームフードで覆って分析を行うため、亜鉛やアルミ、ナトリウム等のコンタミを1/10~1/100まで減少させることができる。
排水や環境水等のヒ素、セレン(水素化物発生-原子吸光光度法(ICP発光法))
● 分析手法
試料分取→酸試薬添加→加熱(180℃)白煙が出るまで→試薬添加→ろ過(必要であれば)→メスアップ
● 特徴
時計皿の設置やろ過等、人の介在する作業が必要になるため、前処理を全自動で行うことはできないが、手間のかかるヒ素、セレン前処理の工数削減のメリットは大きい。ホットプレートにおける温度のバラつきが無い為、蒸発状況確認管理等の必要が無くなる。
お米や稲穂中のカドミウム、鉛
● 分析手法
サンプル分取(米は細かく砕いたもの)→硝酸添加→加熱(時計皿を置く)→放冷→メスアップ
● 特徴
加熱の際は時計皿を置いて硝酸を還流させるようにする。突沸するようなサンプルは、最初低温で徐々に温度を上げていくとよい。稲穂はシリカを含む場合が多いので、分解後はシリカの沈殿物が残る。その場合はろ過を行う。
作業環境金属項目のろ紙
● 分析手法
ろ紙をバイアルに入れる→王水や硝酸を添加→時計皿を置く→加熱→放冷→メスアップ
● 特徴
時計皿を置いて酸を還流させると、分解が早くなり、また硝酸を都度追加する手間を省くことができる。セルロースろ紙は完全溶解させる。ガラス繊維ろ紙はろ過を行う。B測定も入れると、測定検体数が多くなる作業環境測定の為、60検体を1バッチで測定できるDEENAのメリットは大きい。
鋼や非鉄金属等における王水分解
● 分析手法
サンプル分取→塩酸・硝酸を添加→加熱→放冷→メスアップ
● 特徴
サンプル性状にもよるが、ホットプレートの温度は100℃程度でも十分に溶解できる。王水の分解ガスによる人への曝露を防ぐことができる。(王水ガスはとても臭い)
金属シリコンにおける硝酸・ふっ酸分解
● 分析手法
サンプル分取→硝酸添加→ふっ酸を1滴入れて30秒放置、この作業を繰り返す→溶解したらメスアップ
● 特徴
シリコンはふっ酸との反応性が非常に高い。1滴入れて放置等の作業はDEENAで行うことがより効率化に繋がる。ふっ酸は非常に危険な試薬である。DEENAを用いることにより、人の危険な作業からの開放が可能となった。
材質 | ホットプレート部:ジルコニアにふっ素コーティング部材(酸ミストに接触する部分):PTFE |
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試薬の添加 | 最大9種類の試薬を装備可能。ペリスタリックポンプにより、任意の吐出量が制御可能。 |
撹拌 | バイアルトレーが細かく振動することによる撹拌。 |
加熱 | 室温~180℃/温度プログラムを組むことが可能。 |
加熱や放冷の調整 | バイアルトレーの上下稼働により、加熱や放冷の制御。 |
シリンジモジュールを用いた試薬の添加 | 添加精度を要求される内部標準液や試薬の添加に用いる。 |
メスアップ | 超音波を用いた高さセンサーによるメスアップ。液面とは非接触。 |