近赤外分光分析法による 大豆の機能性成分含量の推定

05.01

近赤外分光分析法による 大豆の機能性成分含量の推定

(独)農研機構・九州沖縄農業研究センター
佐藤哲生・西場洋一

九州沖縄農業研究センターは、熊本にあります。九州地域にある農業研究センターとして、私たちは、(暖地)農産物の品質評価・機能性評価の研究を担当しています。そのなかの最近の研究成果を紹介することにしましょう。

大豆は、優れた伝統的な食品をつくる素材ですが、新規食品をつくる素材としても利用されています。その需要拡大を図るためには、より高付加価値の大豆を作出することが重要です。これらに役立てようと、私たちは、これまでに、大豆の製油工程管理のための指標や大豆の脂肪酸組成などを測定するために、近赤外分光分析法(近赤外法)による簡易迅速測定法の研究を行ってきました (1、2)。

近年、大豆の消費ニーズは、急速に高度化・多様化し、 主要成分のほかに、特徴的な栄養成分・機能性成分にも注目が集まっています。こうした状況の下に、SpectraStar2400(写真、Unity Scientific, 米)と統計解析ソフト:SensoLogic (Sensologic GmbH,独)を用いて、大豆粉末あるいは丸のままの大豆複数粒計測で、大豆の機能性成分:イソフラボン・ビ タミンB類(チアミン、リボフラビン)・トコフェロール(ビタミンE)類の含量推定法の検討を行いました(3)。

材料として、日本各地で栽培された大豆を用いました。大豆粉は、超遠心粉砕器(Retsch,独;篩目=1mm)で調製しました。イソフラボン、ビタミンB類、トコフェロール類は、高速液体 クロマトグラフィーで測定しました(4)。

標準カップに粉砕した大豆粉を充填して、あるいは、全粒セルに丸のままの大豆を複数粒充填して、近赤外スペクトルを測定しました(測定装置: SpectraStar2400,波長:1200~2400nm,1nm step,測定方式:拡散反射モード)。

得られた近赤外スペクトル値および化学分析値を用いて、キャリブレーション用、プレディクション用に試料群を分け、解析ソフトウェアSensoLogicで、重回帰分析、 PLSR/PCRの統計解析を行いました。

重回帰分析の結果、大豆粉の測定では、イソフラボン総量は、近赤外法による推定が可能でした。図は、そのプレディクションの結果を示しています。イソフラボンは、配糖体、マロニル配糖体、アセチル配糖体、アグリコンで構成されていますが、そのなかでも含量の多い配糖体、マロニル配糖体の個別の推定も可能でした。また、総トコフェロール含量の推定可能性も示唆されました。ビタミンB含量は、変動幅自体が小さかったので、推定精度が低下しました。一方、全粒測定では、粉体で測定する場合よりも、精度が低下しましたが、イソフラボン総量は、近赤外法による非破壊推定が可能でした。さらに、PLSR/PCR 解析でも、重回帰分析と同様の傾向が得られました。

近赤外法は、大豆の主要成分分析の公定法として、すでに利用されています(5)。これまでの知見(1、2)や、今回の知見(3) により、近赤外法が、より幅広く用いられ、大豆分析法としての 地位を固めていくことを望むものです。

<引用文献>
1)Sato T, et al.: J. American Oil Chemists’ Soc., 71(10): 1049-1055(1994).
2)Sato T, et al.: J. American Oil Chemists’ Soc., 79(6): 535-537(2002).
3)佐藤哲生ら:第23回近赤外フォーラム講演要旨集, p116(2007).
4)西場洋一ら:日本食品科学工学会誌,54(6)295-303(2007).
5)USDA FIGS: Near-Infrared Transmittance(NIRT)Handbook(1996).

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